ニュースに怯えた私がベイルートに3泊して見つけたホテルの真実

レバノン滞在の悩みはこれで解決!ベイルート安全ホテル5つの原則

楽しみにしていた旅行の直前、パソコンの前で「ベイルート 治安」「レバノン ホテル」と何度も検索窓に打ち込んでは、画面を閉じる——そんな夜、ありませんか?

私は、あります。何度もあります。そして、こう言うと怒られるかもしれませんが、ベイルートに関して言えば、その検索の仕方ではたどり着けない答えがあるんです。

申し遅れました。私はホテルと旅行の世界を20年以上渡り歩いてきたブロガーです。20代後半は旅行代理店の社員として、30代以降はフリーランスの旅行ブロガーとして、月の半分をホテルで過ごす生活を続けています。とはいえ、若い頃は「安ければ正義」と思い込んで最安値の宿ばかり選び、カビ臭い部屋やお湯の出ないシャワーで何度も絶望してきた人間です。ポイント目当てで予約サイトを使い分けた結果、二重予約でキャンセル料3万円を取られたこともあります。そんな私の、ベイルートでの話です。

ラフィク・ハリリ国際空港の自動扉が開いた瞬間、生ぬるい夜風と一緒に、3人の男が同時に寄ってきました。「タクシー!」「どこまで?」「安くするよ!」。地中海の湿った空気と、汗と、安っぽい芳香剤の匂いが混ざって鼻を突く。これが、私にとっての「ベイルートへようこそ」の挨拶でした。

ベイルートは、日本人が抱く「中東」のイメージのどの引き出しにも、きれいには収まりません。ドバイのような人工的な洗練もなければ、イスタンブールのような観光地としての整備もない。かといって紋切り型の「紛争地」でもない。ベイルートは、18公認宗派が路地一本挟んで隣接し、国家電力が1日2〜4時間しか来ず、レートの違う2つのドルが流通する、世界でも稀有な多層都市です。

この記事では、そのベイルートで「失敗しないホテル選び」の全てを、私の痛い経験と2025〜2026年の最新実情に基づいてお伝えします。結論から先に言います。ベイルートのホテル選びは、「ジェネレーター24時間稼働の明記」と「支払いはUSドル現金のみ」の2点を確認した瞬間に、8割が決まるんです。

読み終わる頃には、ベイルートは「怖い街」から「準備した人だけが楽しめる街」に変わっているはずです。ラウシェの夕日、ジュマイゼのストリートアート、ハムラのカフェで飲むアラビックコーヒー、アシュラフィーエの石畳——それらを安心して味わう自分のイメージを、この記事で一緒に手に入れましょう。

目次

ベイルートのホテル選びで最初に知るべき「5大リスク」の全体像

ベイルートのホテル選びで失敗する人は、ほぼ例外なく「日本の感覚」や「他の中東都市の感覚」を持ち込んでしまう人です。ドバイで使えるクレジットカードの感覚、イスタンブールで通用した流しタクシーの感覚、バンコクで問題なかった「5つ星なら安心」の感覚。どれもベイルートでは、そのまま通用しません。

まず全体像として、ベイルートには構造的に存在する5大リスクがあります。この5つを知っているかどうかで、あなたのベイルート滞在の8割が決まると言っても大げさではないんです。

ベイルート、1泊15ドルの格安ゲストハウス見つけたっす! カードで払えば楽勝っしょ! タクシーはあっちで値切ればいいし、夜はマル・ミカエルのバーで朝まで遊ぶっす!

タケシさん。その計画、全部ベイルートの地雷を踏み抜いています。順番に説明しますので、最後まで聞いてください。ベイルートのホテル選びは、5つのリスクを知ってから予約ボタンを押す街なんです。

その5つのリスクというのが、次のものです。

  • 停電:国家電力が1日2〜4時間しか来ない。ジェネレーターなしのホテルは夏にサウナ化する
  • クレカの罠:公定レートが適用されて、現金払いの数十倍の請求が届くことがある
  • 流しタクシー追加請求:乗車前に合意した価格が、降車時に2〜5倍に跳ね上がる
  • デモによる空港封鎖:2025年2月にも実例。帰国便を丸ごと失うリスク
  • 深夜のひったくり:マル・ミカエルの路上でスマホを出した瞬間、二人乗りバイクが狙ってくる

正直に言うと、私も最初はこのうち3つを踏みました。深夜のマル・ミカエルで危うくスマホを失いかけ、ジュマイゼのレストランでクレカを切って後日明細で固まり、空港出口の流しタクシー運転手にトランクを人質に取られた経験があります。あの頃の自分は、完全にカモでした(笑)。でも、この5つを知ってからのベイルートは、別の街のように安心して歩ける場所に変わったんです。

リスク①「停電」——国家電力EDLは1日2〜4時間しか来ない

ベイルートの国家電力、通称EDL(Électricité du Liban)の供給時間は、1日わずか2〜4時間。これがベイルート市民にとっての「普通」です。さらに2024年8月には、最後の発電所が燃料切れで停止し、国全体が完全停電に陥りました。日本人の感覚で「電気は24時間あるもの」と思っているとベイルートでは最初の夜に現実と殴り合うことになります。

ホテル側は民間のジェネレーター(自家発電機)を契約して電気を供給しています。しかし、このジェネレーター契約の「アンペア数」と「稼働時間」がホテルによって全く違うんです。24時間稼働のホテルもあれば、深夜帯は止めるホテルもある。エアコンだけ動かせるアンペア数のホテルもあれば、エレベーターも止まるホテルもある。

リスク②「クレカの罠」——公定レートで数十倍の請求が届く

レバノンには現在、2つのドル建てレートが並行して存在しています。旧公定レート(1USD=1,500LBP)と並行市場レート(1USD=90,000LBP超)。この差は数十倍です。

ホテルやレストランでクレジットカードを切ると、どちらのレートが適用されるかは店側(銀行側)の設定次第。不運にも旧公定レートが適用されると、現金払いなら$20で済んだ食事が、カード明細では数百ドル単位で請求されることがあるんです。「ベイルートでクレカは使えない」というのは不正確。正確には、「使うと負ける」ことがあるです。

リスク③「流しタクシー追加請求」——降車時に2〜5倍を言い渡される

空港を出た瞬間、赤ナンバーの流しタクシー運転手たちが一斉に寄ってきます。価格を合意してトランクに荷物を積む。車は走り出す。市内のホテルに着いた瞬間、運転手は言います。「それは荷物なしの値段だ。スーツケースがあるから$35」。トランクは開かない。時刻は深夜。ホテルのフロントは遠い。多くの旅行者が、ここで折れます。

リスク④「デモによる空港幹線道路封鎖」——2025年2月実例

2025年2月、ヒズボラ支持者による政治デモがベイルート空港の幹線道路(エアポートロード)を封鎖し、複数のフライトが運休・遅延しました。Alarabiya、Al-Monitor をはじめとする主要メディアが報じた実例です。

ラフィク・ハリリ国際空港からベイルート市街への道は、実質的に一本道。ここが封鎖されると、迂回路は山越えの細道しかなく、通常20〜30分の行程が2〜3時間になることもあります。「帰国便当日に流しタクシーで空港へ」という発想は、2025年のベイルートでは帰国便そのものを失う発想に近いんです。

リスク⑤「深夜マル・ミカエルのひったくり」——二人乗りバイク

ベイルート屈指のナイトライフエリア、マル・ミカエル。深夜1時、バーの出口に人があふれ、音楽が路上まで漏れ出す。ここでUberを呼ぶためにスマホを路上で構えた瞬間が、最も狙われやすい瞬間です。二人乗りのバイクが音もなく近づき、後ろの人間が手を伸ばしてスマホをかっさらう。抵抗しなければ怪我はしません。でも連絡手段と地図と予約情報と写真の記録を、全部同時に失うことになります。

この記事で伝えたい結論

ベイルートのホテル選びは、「ジェネレーター24時間稼働の明記」「支払いはUSD現金のみ」「Uber/BoltはUSD現金設定」「帰国便3〜4時間前行動+前日夜から道路情報確認」「深夜マル・ミカエルではスマホを出さない」の5原則で、上記5大リスクの大半は回避できます。順に見ていきましょう。

停電は「起きるか」ではなく「今日は何時間電気が来るか」の問題

ハムラのホテルの部屋、夏の夜10時。

エアコンが唸りを止め、天井のライトが落ちる。暗闇の中で、湿度70%の空気が肌に貼り付いてくる感覚が、まず先に来る。5秒、10秒、30秒……ジェネレーターの低い唸りが壁の向こうから聞こえ始め、蛍光灯がちらつきながら戻る。エアコンが再起動するまで、さらに2分。その2分間、汗が首筋を伝います。

この夜、私は「ジェネレーター24時間稼働」という一文の価値を、体で理解しました。そしてこうも思いました。ジェネレーターのない宿に泊まっていたら、この闇は朝まで続いていた、と。

ベイルートの夏(6〜9月)は、気温30℃超・湿度70%。部屋のエアコンが止まった瞬間、気温は急速に上昇し、30分後には室温が40℃近くまで上がることも珍しくありません。これが、ベイルートで「ジェネレーター付きのホテルを選ぶ」ことが快適さの問題ではなく、生存のための選択である理由です。

EDL(国営電力)の供給実態と2024年8月の完全停電

レバノンの国家電力公社EDLは、長年の経営危機・燃料不足・インフラ老朽化により、供給時間が1日2〜4時間まで落ち込んでいます。地域によっては、日によって全く来ないこともあります。

そして2024年8月。最後の稼働発電所が燃料切れで完全停止し、国全体が数日間の暗闇に沈みました。これはニュースで取り上げられた歴史的な日ですが、ベイルート市民にとっては「また止まった、でも今までよりちょっと長い」という感覚の延長線上の出来事でもあります。それくらい、停電は日常の一部になっているんです。

もっと詳しく:EDLとモウェリッド(民間発電機)の二重構造

ベイルートの電力は、国営のEDLと民間発電機(通称「モウェリッド」)の二重構造で成り立っています。各建物・各エリアごとにモウェリッド業者と契約し、EDLが止まっている時間帯はモウェリッドから電力を買う形です。契約できるアンペア数は5A/10A/15Aなどに分かれ、数字が大きいほど多くの家電を同時に動かせますが、その分料金も高くなります。ホテルの場合、「24時間稼働」「15Aクラス」「エアコン・エレベーター・Wi-Fiがすべて継続稼働」を謳うクラスが、旅行者にとっての快適ライン。予約ページに明記がない場合は、必ずホテルに直接問い合わせてください。

ジェネレーター(民間発電機)契約の有無が命運を分ける

ここで一つ、誤解を解いておきたいんです。5つ星ホテルだから大丈夫、というのは必ずしも真ではない、ということ。

一流ホテルでも、EDLからジェネレーターへの切り替わりのタイミングで数秒の暗転が起きることはあります。違うのは「切替速度」です。0.5秒で切り替わるホテルと、10秒暗闇になるホテルでは、同じ「ジェネレーター付き」でも体感がまるで違う。Wi-Fiルーターが再起動すると、その間15分は通信不能になります。エレベーターに乗っている最中に切り替わりが遅れると、数十秒宙に浮いたままになります。

だから「ジェネレーター付き」だけでは不十分。「24時間稼働」で「切替時の暗転が最小限」であることを、予約前に確認するのが、ベイルート流のホテル選びです。

予約前に聞くべき質問テンプレート

予約サイトの説明欄には、「Generator available」「Backup power」くらいしか書かれていないことが多いんです。これでは不十分。メールかWhatsAppで、ホテルに直接次の質問を送ってください。

  • Is the generator running 24 hours? (自家発電は24時間稼働ですか?)
  • During blackouts, does AC, elevator, and Wi-Fi continue to work? (停電時、エアコン・エレベーター・Wi-Fiは継続稼働しますか?)
  • How long is the switching time from EDL to generator? (EDLからジェネレーターへの切替時間はどれくらいですか?)

ジェネレーター付きって書いてあるホテルを選べば、停電は問題ないと思っていました。まさか「24時間稼働かどうか」「切替時間」まで確認する必要があるなんて……初めて知りました。

ミサキさん、いい気づきです。ベイルートの電力事情は、日本の「停電はイレギュラー」という感覚の外にあります。「今日は何時間EDLが来るか」が日常的に変動する街です。メールで1往復するだけでホテルの質が見えますから、その一手間を惜しまないでください。

このメールに丁寧に答えてくれるホテルは、信頼できます。曖昧な返答、返信の遅さ、「問題ありません」だけの一文——これらは要注意サインです。ホテル側がジェネレーター管理を面倒に思っている証拠であり、実際に滞在した時のサービスの質も、だいたい比例します。

「クレカで楽勝」が地雷——ベイルートの二重通貨と支払い戦略

ジュマイゼのレストランで夕食を終え、カードを差し出す。店員が端末を持ってくる。金額を確認して暗証番号を入力する。ここまでは、世界中のどの街でも同じ動作です。

帰国後、カードの明細を開いた瞬間に、私は椅子の上で3秒固まりました。現金で払った場合の「数十倍」の数字が並んでいたんです。公定レートと並行市場レートの乖離——ベイルートに来る前に、そのことを誰かが教えてくれていたら。財布の中の米ドル現金が、唯一正解だったんだと、帰国して初めて理解しました。

この章で伝えたいことは一つだけです。ベイルートに行くなら、日本を出る前にUSドル紙幣(小額中心)を十分に準備する。これだけで、ベイルートの支払いに関する悲劇の9割は防げます。

なぜクレカ払いで数十倍になるのか——公定レートと並行市場の乖離

2019年の金融危機以降、レバノンの通貨ポンド(LBP)は大暴落しました。にもかかわらず、中央銀行は旧公定レート(1USD=1,500LBP)を公式には維持し続けています。実際の市場では1USD=90,000LBPを超えるレートで取引されているのに、です。

この公定レートと並行市場レートの差が、クレジットカード決済の罠を生みます。店や銀行のシステムによっては、カード決済時に公定レート(1USD=1,500LBP)で請求が計算されることがあるんです。実際のドル価値は90,000LBP相当なのに、1,500LBP換算で「60倍のドル」が請求される——これが「数十倍請求」の正体です。

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レート種別1USDあたりのLBP適用される場面
旧公定レート1,500 LBPクレカ決済・現地ATM引き出し(一部)
並行市場レート90,000 LBP超USD現金払い・両替屋(サラフ)
乖離倍率約60倍これがそのまま「損失」になる

正直、この仕組みを説明するだけで一本記事が書けるほど複雑です。でも旅行者が覚えておくべきことはシンプル。「USドル現金で払うこと」「クレカと現地ATMには手を出さないこと」。これだけです。

USドル現金を準備する具体手順

日本出発前の準備ステップは、以下の通りです。

STEP
日本の銀行で米ドル紙幣に両替する

三菱UFJ、みずほ、三井住友、または成田・羽田の両替所で米ドル紙幣を用意します。滞在日数×1日平均$100〜150が目安(ホテル代別・中級旅行の場合)。

STEP
小額紙幣中心でそろえる

$1、$5、$10、$20 を中心に。$50・$100は大口決済用に少しだけ。屋台・カフェ・チップで小額紙幣が生命線になります。

STEP
分散収納する

財布に1日分/セキュリティポーチに3日分/キャリーケースの隠しポケットに残り、という3箇所分散が鉄則。万が一ひったくり・盗難に遭っても全滅を防げます。

STEP
予備のクレカは1〜2枚だけ持参

ホテルのデポジット、万が一の緊急医療費用などに備えて。基本は使わず、「使わない前提で持つ」スタンスです。

現地で札のお釣りがLBPで返ってくる場面もありますが、それは使い切る前提で持ち帰らないのが無難です。日本ではほぼ両替不可能な通貨ですから。

Uber/Boltの「USD現金設定」への切り替え

もう一つ、出発前にやっておいてほしいのがUber/Boltアプリの通貨設定変更です。

日本でUberを使っているアカウントだと、クレジットカード払いが初期設定になっています。この設定のままベイルートで乗車すると、LBP建てで決済され、公定レートによる割高請求のリスクを背負うことになります。

えっ、Uberってクレカ登録しといたから大丈夫じゃないんすか? 日本と同じ感覚で使えるって思ってました!

タケシさん、ベイルートでは違うんです。Uberアプリの支払い設定で「Cash(USD)」を選択してください。そうすれば乗車終了時にドライバーにUSD現金を直接手渡す形になり、公定レートの罠に巻き込まれません。Boltも同じ方法で設定できます。

アプリの設定手順は簡単です。Uberアプリのメニューから「Payment」→「Add Payment Method」→「Cash」を選択。ベイルート市内の乗車で「Cash (USD)」または「Cash」オプションが選べるようになります。Boltも同様に、支払い方法を現金に切り替えるだけです。出発前に一度、日本国内のダミー乗車画面で設定を確認しておくと確実です。

現地ATMは使わない——公定レートの罠

「現金が足りなくなったらATMで下ろせばいい」——これ、ベイルートでは最も高くつく判断になり得ます。

ベイルートの現地ATMは、公定レートでドル残高を現地通貨LBPに換算することがあり、さらに「フレッシュドル」と呼ばれる新規に持ち込まれた現ドルと、銀行口座内の「ロロラー」(lollar=Lebanese dollar)と呼ばれる名目上のドル残高には天と地ほどの差があります。

旅行者がATMで下ろせるのは、運が悪ければロロラー基準換算——つまり額面の15〜20%しか実効価値がないドルになってしまうケースもあるんです。

どうしても現金が足りなくなった場合は、両替屋(サラフ)を使います。ハムラやアシュラフィーエの商店街にある公式両替屋では、その日の並行市場レートに近いレートでドル→LBP両替ができます。ただし日本円からLBPへの両替は日本で済ませるのが困難なので、基本は「日本でドル紙幣を十分に持ってくる」が前提条件です。

流しタクシーという名のギャンブル——Uber/Boltと空港送迎で攻略する

ラフィク・ハリリ国際空港の到着ロビー。時刻は深夜0時45分。エスカレーターを降り、両替所を通り過ぎ、自動扉に近づく。扉が開いた瞬間、3人の男が同時に寄ってきます。「タクシー!」「どこまで?」「安くするよ!」

隣では、別の旅行者が静かに歩いている。彼は、名前の書かれたボードを持ったドライバーと短く挨拶を交わし、トランクに荷物を積んでもらい、後部座席に座ってドアを閉める。エンジン音と共に、外の喧騒が消える。ホテル送迎を事前に手配していた彼と、何も手配しなかった私の差は、この瞬間の空気の温度ほど違いました。

流しタクシー(赤ナンバー)の追加請求パターン

ベイルートの流しタクシーは、メーター非設置が常態化しています。乗車前に運転手と目的地と料金を口頭合意し、金額を書面・画面で見せ合って、乗る——これが理論上の正しい手順です。ところが現実はこうなります。

流しタクシー追加請求の典型パターン
  • 荷物代:「合意したのは荷物なしの値段。スーツケースがあるから追加$10」
  • 夜間割増:「22時以降は夜間割増50%」
  • 待機料:「信号待ちの時間分の待機料」
  • 渋滞割増:「デモがあって迂回したから追加料金」
  • 人数割増:「2人乗車だから追加$5」

トランクを開けない、エンジンを切らない、ドアロックを解除しない——こうした無言の圧を使って、運転手は追加料金を勝ち取ろうとします。深夜の知らない街で、疲労の中でこれに立ち向かうのは、正直しんどい。そして払ってしまうと、その後の旅の気分まで引きずる。

ベイルートなんて物価安いんすから、タクシー乗ってから値切ればいいっしょ! 中東ってそういうもんだし、慣れてる人は勝てるって!

タケシさん、降車時に2〜5倍請求される場面を私は何度も見てきました。ここで選ぶべきは交渉術ではなく、「交渉の土俵に乗らない方法」です。Uber/BoltのUSD現金設定と、ホテルの空港送迎事前手配。この2つが、ベイルート移動の唯一の正解なんです。

Uber/BoltをUSD現金設定で使う

Uber・Boltは、ベイルートで最も信頼できる移動手段です。その理由は3つあります。

  • 料金が事前確定:乗車前にアプリで金額が表示され、後から追加されない
  • ドライバー情報が記録される:ナンバー・顔写真・名前がアプリに残る
  • ルートが記録される:遠回りや不自然な迂回があれば後で確認できる

ただし前の章でお伝えした通り、支払い通貨設定をUSD現金にすることが絶対条件です。クレカ設定のままだと公定レート適用で割高になるリスクを負います。

Uber料金の目安は、空港↔ベイルート市内で$10〜20(20〜30分)。市内移動ならハムラ↔アシュラフィーエが10〜15分で$3〜6、ハムラ↔ダウンタウンBCDが8〜12分で$2〜5程度。ほとんどの移動は$10以下で収まります。

乗車時は、アプリに表示されたナンバーと実際の車のナンバーを必ず突き合わせてから乗る。深夜は特に、偽Uberを装った流しが寄ってくることもあるので、ここは絶対に省略しないでください。

空港送迎はホテルに事前手配

深夜便・早朝便でベイルートに到着する場合、Uberよりもホテルの空港送迎をおすすめします。ホテル提携のドライバーは、身元保証されており、到着時刻前に名前入りボードを持って待ってくれます。料金は$25〜40程度と、Uberより少し高めですが、「知らない夜の街で車を探さずに済む」という安心感には替え難い価値があります。

手配方法は、予約確認メールの返信で「Can you arrange airport pickup for my arrival on (日付・時刻)? My flight number is (便名).」と送るだけ。多くの中級以上のホテルは標準サービスとして受けてくれます。

市内移動の目安距離・料金

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区間所要時間Uber料金目安(USD現金)
空港 ↔ ベイルート市内20〜30分$10〜20
ハムラ ↔ アシュラフィーエ10〜15分$3〜6
ハムラ ↔ ダウンタウンBCD8〜12分$2〜5
ダウンタウン ↔ アシュラフィーエ10〜15分$3〜6
ハムラ ↔ ラウシェ5〜10分$2〜4

市内移動はこのように、ほとんどが数ドル単位で済みます。地下鉄はなく、路線バスもあまりあてにならないため、Uber/BoltのUSD現金設定が実質的なベイルートの交通インフラです。

ハムラ・アシュラフィーエ・ダウンタウンBCD——基本の3エリアを使い分ける

【ホテル選び】レバノンのベイルートの3つのエリアマップ

さて、ここからが本題。「結局、どこに泊まればいいの?」という問いへの答えです。

ベイルートには宿泊エリアの候補が複数ありますが、初めてのベイルートで迷ったら、ハムラ・アシュラフィーエ・ダウンタウンBCDの3エリアから選ぶのが鉄則です。この3つは、停電対策(ジェネレーター普及率)・治安(警察警備の密度)・利便性(Uber配車・飲食店・英語対応)の3点で、ベイルートの中でも相対的にバランスが取れているエリアだからです。

ハムラとアシュラフィーエとダウンタウンBCD、3つとも名前は聞いたことがあるんですけど、違いがよく分からなくて。初めてのベイルートだと、どれが一番安心ですか?

ミサキさん、大まかに言うと「コスパと利便性ならハムラ」「高級感と街歩きならアシュラフィーエ」「5つ星と安心感ならダウンタウンBCD」という役割分担です。旅のスタイルで使い分けてください。では一つずつ見ていきましょう。

ハムラ(Hamra)——コスパと利便性の最適解

ハムラの中心部、Bliss通り沿いのカフェのテラス席。午前8時。濃いアラビックコーヒーを前に置いて、目の前の通りを見る。バイクが追い抜いていき、猫が軒先に丸まり、AUB(アメリカン大学ベイルート)の学生が英語で話しながら歩いていく。この朝の空気感が、ハムラをハムラたらしめるんです。

ハムラは、ベイルートに初めて来る旅行者にとって最適解と言っていいエリアです。AUB(アメリカン大学ベイルート)を中心に、欧米の研究者・留学生・ジャーナリストが集まる知的で多宗派混在の街。英語が通じる店が多く、飲食の選択肢も広い。ゲストハウス・ブティックホテル・中級ホテルが豊富で、価格帯は$40〜120/泊という、中級旅行者に最適な帯域です。

カフェのコーヒーは$2、シャワルマは$2〜3、ローカルレストランの食事は$10〜20/人。財布の中のドル現金があれば、ハムラは驚くほど快適に過ごせます。

ハムラのもう一つの強みは、Uber/Boltの配車が安定していること。ダウンタウンBCDまでUberで8〜12分、アシュラフィーエまで10〜15分、ラウシェまで5〜10分。観光地へのアクセスが全方位的に良好です。

注意点としては、金曜午後の礼拝時間にHamra通り沿いの一部のイスラム系飲食店・ショップがクローズすることがあります。大きな影響ではありませんが、予定を組む際の参考にしてください。

アシュラフィーエ(Achrafieh)——高級感と街歩きの両立

アシュラフィーエの石畳の路地を歩く。17世紀のオスマン帝国時代に建てられた石造りの建物が、夜の黄色い街灯に照らされている。扉の上にアーチ状の彫刻、窓辺に植物、路地の向こうにジュマイゼのバーの赤いネオン。この美しさは、ベイルートの他のどのエリアにもないものです。

アシュラフィーエは、キリスト教系(マロン派・正教・ギリシャ・カトリック)の旧富裕層エリア。アルコール販売自由、服装自由、高級ブティックホテルとアートギャラリーと高級レストランが集中する、ベイルートの「品の良さ」の中心地です。

価格帯は$80〜250/泊。中級から高級クラスで、ジェネレーター完備ホテルの選択肢も多い。ジュマイゼまで徒歩圏、ダウンタウンBCDまでUberで10〜15分。ストリートアート散策+高級ディナー+歴史的建築散策を1日で組み立てられる立地の強みがあります。

重要:日曜はアシュラフィーエの大部分の店が休業

キリスト教系エリアゆえ、日曜日は飲食・ショッピングの大部分の店が休業します。シャッターの下りた石造りの店先が、人影のない石畳に延々と続く——この静寂も美しいですが、観光計画としては 「日曜のアシュラフィーエ滞在は観光の日に当てない」のが鉄則です。日曜はハムラ・ダウンタウン・ラウシェで過ごし、アシュラフィーエは朝の石畳散歩だけに留めるのが現実的です。

夜にジュマイゼやマル・ミカエルのバーに徒歩移動する場合は、路地裏の単独行動を避け、大通りを歩きましょう。

ダウンタウンBCD(Beirut Central District)——5つ星ホテルと安心感

ダウンタウンBCD(Beirut Central District)は、故ラフィク・ハリリ元首相主導で再開発された、ベイルート中心部の超富裕層エリア。外資系高級ホテル(モーベンピック、ヒルトン・プラザ、ザ・ペニンシュラ・ベイルート等)が集中し、ジェネレーター・Wi-Fi・空港送迎がすべて標準装備という、設備面での安心感が最も高いエリアです。

価格帯は$150〜600+/泊と高いですが、その分「ベイルート固有の罠に巻き込まれるリスク」を金で回避できる側面があります。ビジネス出張・家族旅行・シニア旅行・中東初心者にはダウンタウンBCDが最適でしょう。

ただし一つだけ補足。2019年の金融危機以降、ダウンタウンBCDは空室率7割超のゴーストタウン化しており、夜の人通りは驚くほど少ないです。5つ星ホテルの品質は高いが、ホテルの外に一歩出ると夜のレストラン選択肢が限られる。「ホテル内で完結する旅」を選ぶ人にはダウンタウンBCD、「街歩きを楽しみたい人」にはアシュラフィーエ寄りがおすすめです。

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エリア価格帯/泊雰囲気英語日曜向く人
ハムラ$40〜120学究的・多国籍コスパ重視・初心者
アシュラフィーエ$80〜250キリスト教系・石畳△(閉店多)街歩き+高級感
ダウンタウンBCD$150〜600+再開発・外資系集中5つ星・安心感最優先

ラウシェ・ジュマイゼ・マル・ミカエル——目的別サブエリアの使い方

基本3エリアとは別に、ベイルートには「目的があって訪れる」サブエリアが3つあります。ラウシェ(絶景)、ジュマイゼ(昼のグルメ&アート)、マル・ミカエル(夜のバー)。この3つは宿泊には必ずしも向かないけれど、旅の目的次第では滞在の核になり得るエリアです。

【目的別ホテル選び】レバノンのベイルートのエリアマップ3選

ラウシェ(Raouche)——シービュー絶景、ただし写真詐欺に注意

ラウシェの崖沿いの遊歩道、夕方5時45分。地中海に沈む太陽が水平線を燃やしている。海上に突き出た二本の岩柱——鳩の岩(Pigeon Rocks)——がシルエットになって浮かぶ。空がオレンジからピンク、そして紫へと変わっていく。カメラを構えた旅行者の列ができている。ベイルートのどの喧騒からも切り離された、この10分間のために、この街に来た人間がいる。そう思える景色です。

ラウシェはベイルート南西海岸線にある、ベイルート随一のシービュー絶景エリア。高級ホテルが集中し、価格帯は$120〜400+/泊。サンセット時間帯のホテルテラスやレストランからの景観は、ベイルートの旅の中でも最上級の思い出になります。

ただし一つ、致命的な落とし穴があります。

ラウシェの「Sea View」「Ocean View」を追加料金で予約したのに、実際は隣接ビルが視界を遮って海がほとんど見えなかった——という被害報告が、レビューサイトに大量に存在します。広告写真では確かに海と鳩の岩が写っているのに、現実の部屋からはビルの裏側しか見えない。この「写真詐欺」を避けるための具体的対策は、次のステップです。

STEP
予約前にホテルへ直接メール

「Which floor and room number will give a clear view of the Pigeon Rocks without any building blocking?(鳩の岩がビルに遮られずに見える階と部屋番号はどれですか?)」と質問します。

STEP
レビュー内の「実際の景色」写真を探す

Hotels.com、TripAdvisorの旅行者投稿写真から、「実際の部屋からの景色」を示す画像を探します。ホテル公式写真ではなく、旅行者投稿の方が信頼できます。

STEP
方角・階数・部屋番号を予約条件に明記

「Sea View」という曖昧な指定ではなく、「Floor 9 or higher, room facing west」と具体的に予約条件を固めます。メールでの合意を保存しておきましょう。

ジュマイゼ(Gemmayze)——アール・デコとストリートアートの昼エリア

ジュマイゼの通りを昼間に歩く。左の壁に3メートル四方のグラフィティ。廃墟のビルの外壁に積み上がった砲弾の絵と、その上に飛ぶ鳥の絵。戦争の傷跡を塗り直した壁画が、通りに点在しています。アシュラフィーエに隣接し、アール・デコ建築とストリートアートが交差する、ベイルートで最も「映える」散策エリアの一つです。

通りの奥からシャワルマの肉を焼く匂いが漂ってくる。$2払って一本受け取り、路上で食べる。ラバンと赤いソースが絡んだ薄焼きのピタに包まれた肉——これがベイルートの午後1時の答えだと、私は思っています。

ただしジュマイゼは宿泊施設が限定的(ブティックホテル数軒のみ)。また日曜はアシュラフィーエ同様、大部分の店が休業します。観光は土曜の夕方〜夜か、平日の昼間が最適。宿泊はアシュラフィーエかハムラを拠点にして、日中に訪れる形が現実的です。

マル・ミカエル(Mar Mikhael)——深夜バー街、宿泊は非推奨

マル・ミカエルは、ジュマイゼの北端に隣接するナイトライフ最前線。深夜まで賑わうバー・クラブ・ライブハウスが集中し、中東随一の自由な夜が広がります。

ただし宿泊拠点としては非推奨です。理由は3つ。

  • 深夜の騒音:バー閉店の朝4時近くまで路上の喧騒が続く
  • ひったくりリスク:深夜1〜3時、路上のスマホを狙う二人乗りバイクが出没
  • 2020年爆発の影響:近隣の建物は修復途上、安宿はひび割れ壁・歪み窓枠の部屋が残る

深夜まで飲んで、店出て路上でUber呼んで、そのまま乗ればOKっしょ! 他の街でもそうやってるし!

タケシさん、ベイルートでは違います。マル・ミカエル深夜のひったくり対策は、「Uberは店内で呼ぶ」「車種・ナンバーをアプリで確認」「店を出て車に乗るまでスマホを出さない」。この3ステップを守ってください。路上でスマホ画面を見ながら立っている5分間が、最も狙われやすい時間帯なんです。

ナイトライフを楽しむ場合は、宿泊をアシュラフィーエかハムラに取り、夜だけUberでマル・ミカエルを訪れる——これが最も安全で合理的な動き方です。

デモが空港を封鎖する日——帰国便を守る3つの習慣

デモの翌朝。ハムラのホテルのフロント。私は静かにフロントマンに近づき、こう聞きました。

「空港への道は、今日は大丈夫ですか?」

フロントマンは、笑顔で、しかし真剣に画面を見せてくれました。「昨夜のデモは解散しました。今朝はクリアです。念のため3時間前には出てください」。その一言で、私の肩の力が抜けました。ベイルートでは、ホテルのフロントが帰国便の命綱になることがある——これは、ベイルートに来て初めて知った旅の作法です。

2025年2月の空港道路封鎖の実例

2025年2月、ヒズボラ支持者による政治デモがベイルート空港の幹線道路(エアポートロード)を封鎖し、複数のフライトが運休・遅延する事態が発生しました。Alarabiya、Al-Monitor、L’Orient Today などの主要メディアが連日報じた出来事です。

ベイルート空港への幹線道路はヒズボラ支持者によって封鎖された。複数の航空便が運休・遅延し、旅客は空港に到達するための代替ルートを探すことを余儀なくされた。(2025年2月、複数のレバノン・中東メディアによる報道まとめ)

ベイルート市街から空港への道は、実質的に一本道のエアポートロード。ここが封鎖されると、迂回は山越えの細道のみとなり、通常20〜30分の行程が2〜3時間、最悪の場合は到達不能になります。

前日夜からの情報確認ルーティン

帰国便当日のトラブルを避けるには、前日夜からの情報収集ルーティンを自分の中に作ってしまうのが一番です。

STEP
前日夜、外務省海外安全ホームページをチェック

外務省の海外安全ホームページで、レバノンの最新情勢・デモ情報を確認します。直近で危険情報が更新されていないか、退避勧告が出ていないかを見ます。

STEP
前日夜、現地メディアをチェック

Al-Monitor、L’Orient Today、Alarabiya 英語版などで「Beirut airport road」「demonstration」のキーワードで最新動向を確認します。

STEP
当日朝、ホテルフロントに確認

チェックアウト前にフロントで「Is the road to airport clear today?」と確認。現地情勢はホテルスタッフが最もリアルタイムに把握しています。

STEP
当日3〜4時間前出発

フライト出発の3〜4時間前にはホテルを出発。封鎖時の迂回路での遅延を吸収できる時間バッファを確保します。

当日3〜4時間前出発のロジック

「3〜4時間前は大げさでは?」と思われるかもしれません。でも計算してみるとわかります。通常所要20〜30分+封鎖時の迂回2〜3時間=最大3時間半の移動時間。それに空港チェックインカウンター締切(通常フライト45〜60分前)を加えると、フライトの4時間前出発が安全ラインになります。

帰国便は夕方だし、当日の昼までジュマイゼ観光して、そのまま流しタクシーで空港行けばOKっしょ! デモとか運悪いだけの話っしょ!

タケシさん、それベイルートでは一番リスクの高い行動です。2025年2月にデモで空港道路が封鎖された実例が現実にあるんです。前日夜から外務省の情報を確認して、当日は3〜4時間前出発。流しタクシーではなくUberかホテル送迎で。これが帰国便を守る3つの習慣ですよ。

情報源は以下が便利です。

シービュー写真詐欺・日曜全店閉店・深夜スマホ——日本人がハマる3大トラップ

ここまでは「事前に知っていれば回避できる大きなリスク」を扱ってきました。ここからは、少し細かいけれど、日本人旅行者が特にハマりやすい3つのトラップをまとめます。あなたもこんな「あぁ、知っていれば……」という後悔、したくないはずです。

シービュー写真詐欺の見抜き方

前の章でラウシェで触れましたが、改めて整理します。ベイルートのシービューホテルでは、「Sea View」と書かれた部屋でも、隣接ビルが視界を遮る部屋に当たることがあります。これはラウシェに限らず、海沿いのホテル全般に起こります。

対策は3つ。

  • 予約前メールでフロア・方角・部屋番号を確認
  • 旅行者投稿の写真(Hotels.com等)で実際の景色を確認
  • 「高層階(9階以上)」「西向き」など具体的条件で予約を固める

この一手間を惜しまないことが、ラウシェの夕日を本当に部屋から眺める旅と、窓から隣ビルの裏側を眺める旅の分かれ目になります。

日曜閉店マップ——アシュラフィーエ・ジュマイゼは休業、ハムラ・ダウンタウンは稼働

ベイルートの日曜日は、エリアによって全く別の顔になります。

スクロールできます
エリア日曜の営業状況日曜に向く活動
アシュラフィーエ大部分が休業朝の石畳散歩・教会訪問
ジュマイゼ大部分が休業写真撮影のみ(食事は不可)
ハムラ通常営業ショッピング・カフェ・食事
ダウンタウンBCD通常営業高級レストラン・スークス
ラウシェ通常営業夕日鑑賞・海岸散歩

日曜の観光プランを組むなら、朝はアシュラフィーエの石畳散歩、昼はハムラかダウンタウンBCDで食事、夕方はラウシェで夕日、という流れが最も現実的です。ジュマイゼで土曜夜のバーを楽しみ、日曜朝に静かな石畳を歩く——これが意外と「ベイルートらしい」週末の過ごし方になります。

深夜マル・ミカエルのスマホ防衛術

深夜マル・ミカエルでの帰り方、具体的な手順を改めて整理します。

STEP
店内でUberを呼ぶ

バーやレストランの店内、人目のある場所で配車アプリを開きます。トイレ、バーカウンター、窓際のテーブルなど、店員の目が届く場所が理想。

STEP
車種・ナンバー・ドライバー写真を記憶

アプリに表示される車種・ナンバープレート・ドライバー顔写真を、店内で確認・記憶しておきます。

STEP
到着通知が出たら店外へ

「Driver arriving」通知が出てから店を出ます。スマホはバッグの奥へ。路上でスマホ画面を見ながら立つ時間をゼロにします。

STEP
車の前に立って最終確認

車が到着したら、ナンバープレートを目視で確認し、一致していれば乗り込む。ドアを閉めてからスマホを取り出して行き先確認。

深夜に帰る時の具体的な手順、初めて聞いた時はちょっと神経質すぎるかな?と思ったんですけど……アキラさんの説明を聞いて、これって大事なんですね。慣れてる人ほど無意識にやってるんですか?

ミサキさん、その通りです。ベイルート在住の人たちは、この手順を完全に体に染み込ませています。彼らが神経質だからではなく、「当たり前の習慣」として身につけているから、平穏に暮らせているんです。旅行者も同じ習慣を一時的に借りる——そう考えると、少し気楽にやれるかもしれません。

水道水NG・祝砲銃声・ダーヒエ立入禁止——知らないと怖いベイルート固有の常識

最後の章は、「事前に知っているだけで恐怖や健康被害を避けられる3つの知識」です。いずれも日本では起こらない、レバノン固有の文化・歴史・地政学的背景を持っています。

水道水は飲料不可——歯磨き・うがいもボトル水

ベイルートの水道水は、飲料不可です。これは議論の余地なく、歯磨き・うがい・野菜洗いも含めて全てボトル水で対応するのが鉄則です。

理由は複合的です。給水インフラの老朽化、給水車依存のエリアでの水質変動、海水淡水化の塩分残留、パイプ内の堆積物——いずれも日本の上下水道とは前提条件が違います。初日に水道水で歯磨きして、翌朝から3日間お腹を壊す日本人旅行者は、毎年一定数います。

対策は簡単。チェックイン時に部屋内のボトル水の有無を確認し、必要であれば追加で買います。コンビニ・ホテルショップ・ミニマーケットで1.5Lボトル水が$0.5〜1.5程度。1日1人2本を目安に、常に部屋に在庫を持つのが安全です。

祝砲(空への実弾発射)文化の正確な理解

夜中の2時、窓の外から乾いた「バン、バン、バン」という音が響く。体が固まる。ベッドの上に起き上がり、息を止める。また聞こえる。3秒後、どこかで歓声が上がる。

結婚式の祝砲だ——そう気づいた瞬間、心臓が少しずつ落ち着いていく。

ベイルートでは、結婚式・試験合格・政治的慶事の祝いとして、空に向かって実弾を発射する「祝砲」文化があります。事前に聞いていなければ、この夜は眠れないまま朝を迎えることになります。

夜中に銃声みたいな音がして、超ビビったっす! ベッドの下に隠れかけたっす!!

タケシさん、それは戦闘行為ではなく、ほぼ確実に祝砲です。結婚式・慶事で空に向かって銃を撃つ文化があるんです。ただし、上空に撃った弾が落下する事故は実際に起きています。音が聞こえたら窓から離れて、外出を控えてください。パニックにはなる必要はありませんが、完全に安全とも思わないでください。

祝砲への正しい対処
  • 音が聞こえたら、まず窓から離れる(落下弾の可能性)
  • 屋外にいる場合は建物の中に入る
  • バルコニー・屋上には出ない
  • 数分でたいてい収まる。収まるまで動かない

ダーヒエ地区・難民キャンプ周辺は絶対立入禁止

ベイルート南部郊外のダーヒエ地区は、ヒズボラの軍事・政治拠点です。ここは観光地ではなく、旅行者は絶対に立ち入ってはいけないエリアです。同様に、パレスチナ難民キャンプ(シャティーラ、ブルジュ・バラジュネなど)も立入禁止ゾーンです。

問題は、Uberや流しタクシーで空港へ向かう際、Google Mapのルートが意図せずダーヒエを経由する場合があることです。これを避けるために、ベイルート南部方向への移動時は、以下を徹底してください。

  • ドライバーに行き先を事前に明示する(「Airport, via Airport Road only, no shortcut through southern suburbs」)
  • Uberアプリのルート表示を乗車中に確認する(ダーヒエを通りそうな場合は変更依頼)
  • 深夜の南部方向への移動は控える(街灯が少なく、検問所でのトラブルリスクが増す)
  • スマホでの撮影は絶対にしない(検問所でデータ消去を命じられるケースが頻発)

ホテルが手配する空港送迎車は、こうしたエリアを回避するルートを熟知しています。これも「ホテル送迎を使う」理由の一つです。

ベイルート滞在でよくある質問(FAQ)

ここまでカバーしきれなかった個別の質問を、FAQ形式でまとめます。あなたの疑問と重なるものがあれば、参考にしてください。

ベイルートに女性一人旅で行っても大丈夫ですか?

ハムラ・アシュラフィーエ・ダウンタウンBCDの基本3エリアに宿泊し、夜の単独行動を控えれば、女性一人旅も十分に実行可能です。ただしマル・ミカエルの深夜単独帰宅、Dahiyeh方面、難民キャンプ周辺は避けてください。服装はアシュラフィーエ・ハムラなら普段着でOKですが、スンニ派地区(Tariq el-Jdideh等)やDahiyeh境界付近では露出を抑えるのが無難です。

レバノンの外務省危険レベルは?最新情報はどこで見ればいい?

外務省海外安全ホームページ(https://www.anzen.mofa.go.jp/)で最新の危険情報を必ず確認してください。レバノンは地域・時期によって危険レベルが変動します。出発前だけでなく、滞在中も継続チェックが必要です。退避勧告が出ているエリアへの立ち入りは絶対に避けてください。

ベイルートでクレカは本当に全く使えないのですか?

全く使えないわけではありません。5つ星ホテルのデポジットや緊急医療費など、クレカ対応の場面はあります。ただし公定レート適用で想定外の請求になるリスクがあるため、「基本はUSD現金、クレカは予備」というスタンスが安全です。特にレストラン・小売店でのクレカ利用は避けましょう。

ラマダン期間中の旅行で注意することは?

アシュラフィーエ・ジュマイゼ・ハムラの多くの店は通常営業しますが、スンニ派地区(Tariq el-Jdideh等)では日中の飲食が制限的になります。また夕方のイフタール時間帯は交通渋滞・レストラン混雑が生じます。基本的には観光は可能ですが、イスラム系エリアでの日中の公然飲食は控えるのがマナーです。

ベイルートで日本食は食べられますか?

ハムラ・アシュラフィーエに日本料理店が数軒あります。価格は日本の1.5〜2倍程度。ただせっかくベイルートに来たのですから、シャワルマ・フムス・キッベ・タブレ・マナキシュといったレバノン料理を満喫することをおすすめします。滞在後半で日本食が恋しくなったら、という緊急用として覚えておくくらいが丁度いいです。

LGBTQ旅行者にとっての注意点は?

マル・ミカエル・ジュマイゼ周辺は中東では相対的に寛容なエリアですが、レバノン刑法534条は同性間の性行為を違法とする条文が残存しています。公共の場での同性愛表現は避け、保守的な宗派地区(Dahiyeh、Tariq el-Jdideh等)では厳にタブーです。ホテルのダブルベッド予約も、保守的エリアのホテルでは慎重に行ってください。

英語はどの程度通じますか?

ハムラ(AUB周辺)・ダウンタウンBCD・アシュラフィーエの高級エリアでは英語がよく通じます。フランス語が第二言語として広く使われているため、英語かフランス語のどちらかが話せれば基本的なコミュニケーションは可能。タクシー運転手や屋台の店員には英語が通じにくい場面もあるため、行き先メモを紙に書いて用意しておくと便利です。

水道水で野菜を洗ったら大丈夫?

水道水での野菜洗いも避けた方が安全です。ホテルやレストランで出される野菜はボトル水で洗浄済みの前提で食べられますが、自炊で生野菜を扱う場合はボトル水またはミネラルウォーターを使用してください。サラダやフレッシュフルーツは信頼できる店で食べる、が基本です。

VPNは必要ですか?

一般的な観光・滞在では必須ではありませんが、日本のサービス(ネット銀行、一部の動画配信)をストレスなく使いたい場合はVPNがあると便利です。またWi-Fi環境の質が変動するため、セキュリティ面でもVPN推奨。出発前に信頼できるVPNサービスに加入しておくのが無難です。

ベイルートからバールベックやビブロスへの日帰りは可能?

ビブロス(Byblos)は車で約40分、日帰り観光に最適です。バールベック(Baalbek)は車で約2時間、ヒズボラ影響圏を通過するため事前の情勢確認とガイド付きツアー推奨。いずれも、ホテルで信頼できる専用ドライバーを手配するのが安全です。流しタクシーでの長距離移動は避けてください。

まとめ——ベイルートは「5原則」で攻略する

長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。最後に、ベイルートのホテル選び・滞在を攻略するための5原則を、もう一度整理しておきます。

ベイルート5原則チェックリスト

  • ①ジェネレーター24時間稼働の明記——予約前にホテルへ直接メール/WhatsAppで確認
  • ②支払いはUSドル現金——日本出発前に小額紙幣を両替し、3箇所分散収納
  • ③Uber/BoltはUSD現金設定——アプリで支払い通貨をCash (USD)に変更してから乗車
  • ④帰国便3〜4時間前出発+前日夜から道路情報確認——外務省・Al-Monitor・フロントで三重確認
  • ⑤深夜マル・ミカエルではスマホを出さない——店内でUber呼び出し→車種確認→車に乗ってからスマホ

この5原則を守るだけで、ベイルートの5大リスク(停電・クレカ・流しタクシー・デモ封鎖・深夜ひったくり)の大半は回避できます。

エリア選びの最終推奨マップ

スクロールできます
旅行スタイル推奨エリア理由
初めてのベイルート/コスパ重視ハムラAUB周辺・英語通じる・中級ホテル充実
高級感+街歩き(日曜以外)アシュラフィーエオスマン建築・ジュマイゼ徒歩圏
5つ星と安心感最優先ダウンタウンBCD外資系ホテル・設備標準装備
シービュー絶景(要部屋確認)ラウシェ鳩の岩・夕日・サンセット
ナイトライフ(昼拠点から訪問)ジュマイゼ/マル・ミカエル宿泊はアシュラフィーエ・ハムラで

最後に伝えたいこと——ベイルートは、準備した人だけが楽しめる街

ラウシェの崖の遊歩道、夕方5時45分。地中海に沈む太陽が水平線を燃やしている。鳩の岩の2本の柱が逆光でシルエットになる。隣に立っていたカップルが写真を撮り合っている。風が海から吹き上げてくる。

停電があっても、通貨の混乱があっても、タクシートラブルがあっても——この夕日を見るために、ここに来た旅行者の気持ちは、ちゃんと正しかった。私はいつも、ラウシェの夕日を前にそう思います。

ベイルートは、準備した人だけが楽しめる街です。そしてここで言う「準備」は、豪華な装備でも特別な技能でもありません。ジェネレーター確認のメールを1通送る。USドル紙幣を銀行で少し両替する。Uberアプリの設定を変える。外務省のサイトをブックマークする。深夜のUberを店内で呼ぶ。たったこれだけです。

ジェネレーター確認、USD現金、Uber設定、帰国便前日確認、深夜スマホ厳禁。この5つを守れば、ラウシェの夕日、ジュマイゼのストリートアート、ハムラのアラビックコーヒー、アシュラフィーエの石畳、そして地中海料理のすべてを、あなたは安心して楽しめます。ベイルートは、準備した人だけが見ることのできる、最高の景色を持つ街です。どうか、この記事の5原則を踏み台にして、最高の旅にしてください。

20代の頃の私は、最安値のゲストハウスで何度もハズレを引いた人間です。その後も口コミ★4.5を信じてカビ臭い部屋に当たったり、ポイント目当てで二重予約してキャンセル料を取られたり、ありとあらゆる失敗をしてきました。でもその失敗があったからこそ、今はベイルートのような一筋縄でいかない街でも、「準備すれば大丈夫」と自信を持って言える自分になれたと思います。

私の失敗を、どうぞ踏み台にしてください。そしてあなたの旅が、ラウシェの夕日のように、忘れられない一枚になりますように。

ベイルートで、お会いできる日を楽しみにしています。

この記事を書いた人

こうじのアバター こうじ トラベルブロガー

どこにでも現れ、どこにも痕跡を残さない。唯一残すのは、独自の視点で切り取られた『世界の真実』だけ。匿名というレンズを通して、場所の本質を丁寧に紐解きます。プロフィール

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